世界に捧ぐ~その2

世界に捧ぐ~その2
 今宵も世界に素敵な詩を捧げよう
 隣の家のミヨちゃんと仲良く遊んでいたお友達がいなくなりました
 その子は遠い街に引っ越してしまったとミヨちゃんは教えてくれました
 次の日、ミヨちゃんが近くの公園の砂場で遊んでいるのを見かけました
 でも、友達はいなかったので、代わりに僕が遊んであげました
 彼女の寂しさは薄れて、やがて笑顔が戻ってきました
 僕のやさしさが慰めになると知り、僕は母に感謝を捧げました
 でも、母はこの世にいないので、母のぬくもりを詩にして天国に届けました
 いつもずっと、雲の上から僕のことを見守ってくれているのでしょう
 きっと雨の日も風の日も

 今宵も世界に素敵な詩を捧げよう
 隣の家のミヨちゃんと同じ年頃の子供たちが死にました
 彼らの住む街は破壊しつくされ、弔うこともままならない
 次の日、また別の場所で子供たちが死にました、また次の日も
 でも、神様はそこにはいなかったので、誰もそれを止められませんでした
 世界は悲しみに暮れ、祈ることも怒ることもできません
 僕の詩は誰にも届かず、やがて僕は沈黙するようになりました
 でも、ミヨちゃんが唱って欲しいとせがむので、古い詩を読んで聞かせてあげました
 それはずっと歌い継がれ、語り継がれる平和と愛の詩なのでしょう
 きっと明日も歌うのでしょう

 今宵も世界に素敵な詩を捧げよう
 世界がどんなに歪んでも
 今宵も世界に素敵な詩を捧げよう
 未来がどんなに暗くても
 今宵も世界に素敵な詩を捧げよう
 明日が来ないとわかっていても
 今宵も世界に素敵な詩を捧げよう
 これが最後の詩だとしても
 今宵も世界に素敵な詩を捧げよう
 誰の為でもなく
 己の為でもなく
 小さな、小さな希望の為に
 隣の家のミヨちゃんの為に
 親しき隣人のために

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